空港でポケカやってるヤツに負けたくねえ~【CL2022福岡振り返り】

【前回の記事】

 

 

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関東から福岡に行くためには飛行機に乗る必要がある。

飛行機に乗るためには空港に行く必要がある。

関東から福岡に行くために空港に向かうポケカプレイヤーが数多くいることは想像に難くない。

空港に数多くのポケカプレイヤーが集まるとどうなるか・・・。

 

想像通りであった。

 

そこら中のテーブルでポケモンカードをしている輩がいる。

ここ空港だぞ。よくポケモンカードする気になるな。

周りの目とか気にしないのか?恥ずかしいという気持ちがないのか?

ここにいる人間全員がポケモンカードのプレイヤーってわけじゃないんだぞ?

人に迷惑をかけているわけではないし、禁止されているわけでもないのはわかる。

だけど、見ているこっちが恥ずかしいんだ!やめてくれよ!

空港でポケカやってるヤツに負けたくねえ~

でも、公衆の面前で紙おっぴろげることができるくらい人間捨ててるヤツに俺は勝てるのか?

そこまで覚悟決めてるヤツと戦わなくてはならないのか?過酷すぎるだろ。

 

そんなことを考えていたら飛行機の機内にいた。

ここで一安心かと思いきや、不幸にも後ろの席の二人がポケカプレイヤーで、長々と"""語り"""を聞かされる。

公の場で大きい声で語り散らすのやめてくれよ!聞いてるこっちが恥ずかしいんだ!

というか、公の場で語り散らかしているとき、もしも周りに自分より強いプレイヤーがいたらどうするんだ?そんなこと構わないのかもしれないが、俺だったら恥ずかしくてたまらないね。

後ろから聞こえる"""語り"""に耐えながら「お前ら抽選俺優先権、お前ら抽選俺優先権・・・!」と心の中でしょうもないマウントを取り、非常にみっともない自分の人間性に嫌気が差す。

格安飛行機のあまり快適ではない空間にケツを痛めながら2時間、福岡に到着。そして宿に直行。

 

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そして、あっという間に大会当日。

 

タクシーで会場に向かい、らくらく到着。

時刻は朝7時半。福岡といえどさすがに肌寒い。

入場への列はそれほど混んでいるわけではない。寒い思いとはもうしばらくでさよならできそうだ。

 

入場手続きを済ませ、会場へ入る。なんと綺麗な会場であろうか。

 

今シーズン目にするのは4回目となるザシアン・ザマゼンタの看板を拝み、1回戦の席へ着席。

なんか向かいの卓にフリーザ様いるし、マッチング表をざっと眺めていたらトモハッピーことサイトウ トモハルの名前があるしで、会場間違えたか?という気分だ。

 

隣の席のプレイヤーと雑談。対戦相手くるといいですね~と他愛ない会話。

その会話を聞いたらしく、フリーザ様からも「そこ大事ですよね 対戦相手来てほしいですね~」との言葉。そんな、フリーザ様が一般地球人に話しかけるなんてとんでもない。

間もなく、フリーザ様は知り合いを見つけたらしく、「これはこれは...(激似)」と挨拶していた。

ナメック星をはじめこの宇宙のあらゆる惑星は既に破壊されたのだろう、ポケモンカードに勤しむフリーザ様に不思議な感情を抱いた。

それはさておき、1回戦不戦勝は大型大会にとって美味しくない。詳細は割愛するが、とにかく良くないのだ。対戦相手がくるかどうかすら考慮しなくてはならない。ここから勝負ははじまっているのだ。

 

そうだ、うんこをしよう。

トイレへと向かう。

前回のCL、京都会場ではトイレの行列を管理するスタッフがいて、並ぶ人々に「大ですか?小ですか?」と問う地獄のような世界だった。

さて、今回はどうだろう。表示に従ってトイレへと向かう。

大行列というわけではないが、そこそこ並んでいるトイレ待機列に着く。

今回はスタッフはいないようだ。列の進みも早い気がする。

あっという間に列が進み、トイレルームへ。

なんだここは!ここが天国だろうか・・・

輝く室内、無数の個室・・・

京都の地獄がウソのようである。毎回ここでCLやってくれ。

のちにTwitterで見た話だが、1階にはトイレが2か所あり、どちらも男子トイレになっていたらしい。排泄で困ることないCL会場なんてはじめてだ。

 

爽快...あまりにも爽快な気分で席に戻ると、対戦相手が到着していた。

軽く会話。大型大会は初めて参加らしい。納得だ、見るからに緊張している。

大型大会に出たことある人ならわかるかもしれないが、「1回戦の対戦相手が初心者」というのは幸運なことではない。言い方が悪いかもしれないが、CLに巣食う"魔物"である。

 

「両負けだけは避けたいですね~」「お互い楽しくやりましょう!」と声をかける。

不本意だ。俺は「お互い楽しくやりましょう!」を自分を鼓舞するための言葉として使っている。

だが今回は違う。この「お互い楽しくやりましょう!」は"相手からの警戒心を解くため"に放った言葉だ。警戒心を解くことに何を意味があるのか、単純だ。

 

投了を促すためだ。

 

見下している。心の底は「初心者とは同じ目線でプレイをしない」という感情が渦巻いている。これが俺だ。俺の本性だ。

最悪のケース「1回戦両負け」を避けるために死力を尽くす。

 

相手は"魔物"なのだ。

 

隣の席を見ると、対戦相手は未だに現れないようだ。彼は青ざめている。お気の毒に。

 

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開会式がはじまり、そして対戦準備。シャッフルやコイントスに関してお互いが納得いく形で相談、そして合意。戦いは目前だ。

 

使用デッキは「はくばバドレックスVMAX+スイクンV」のデッキ。

前回のCL京都にてベスト64入賞へと導いてくれたデッキだ。

今回も頼むぜ、相棒。幾多のふるい落とされた候補デッキたちや、このデッキを強くしてくれた練習仲間たちの思いを背負い、共に戦う。

 

手札はあまり良くない。だがここで負けられない。なんとしても越えてみせる!

「楽しくやりましょう!」と声をかけ、バトルスタート。

コールが響き渡り、直後にポケットモンスター ソード&シールドのBGMが会場へと放たれる。

ここだ。ここがCLで最も気持ちが高まる瞬間だ。ポケモンが大好きな故にプレイしているポケモンカードゲーム。大好きなポケモンのBGMを背に戦えるなど、なんと高ぶる、なんと幸せなことであろうか。

 

お互いのバトルポケモンが睨み合う。

 

さあ、戦いの始まりだ!

 

●1回戦 ゲンガーVMAX 〇

大変なデッキに当たってしまった。

スイクンがキョダイマルノミを耐えることができない。

はくばバドレックスをうまく駆使して勝たなくてはならない。

しかも後攻だ。押される試合になることは目に見えている。

 

案の定、サイドを先行される試合。しかも後続は不十分だ。

勝ち目を探そう。ジメレオンが閉ざされたデッキを解錠する。

・・・ありそうだ。

頼むぞフリージオ!相手のグッズを封じるポケモンだ。

バトル場をフリージオに預ける。

頂への雪道を出す。"頂への"雪道だ。頂へと、勝つための一歩を踏み出す。

そしてボスの指令!エネルギーの付いていないヘルガーを呼び出す。

ワザを宣言、カチカチロック。時間を稼いでくれ、フリージオ

ダメージこそ微々たるものだが、相手はポケモンいれかえをはじめとしたグッズを使うことができない。つまり、ヘルガーはエネルギーを貼らない限り逃がすことはできない。

この作戦がうまくハマった。相手の動きを封じ込める。

番が返る。ベンチにはくばバドレックスを呼び出す。お前が勝利の鍵だ。

だがこちらの手札が弱い。逆転される可能性があるが、仕方なくマリィを使う。

そしてカチカチロックを宣言。もう少しだけ頑張ってくれ!

 

だが一筋縄ではいかない。いや、裏目だ。

相手の手札からは あくの塔 ネズ 次々と飛び出す"グッズ以外のカード"。やられた。ネズによって招かれたハイド悪エネルギーによってヘルガーはバトル場から去り、VMAXポケモンがそびえ立つ。

フリージオが倒される。

ありがとう、よくぞ玉将を守ってくれた。

さあ、王手をかけるぞ。キングポケモンのバドレックスがバトル場へ。

エンペラーライド、ダイランスを使ってVMAXポケモンを仕留める。

形成逆転だ。猛攻。頂への雪道とリセットスタンプの王道コンボも炸裂。

ついにサイドは残り1枚に。

 

だが、恐れていた事態が訪れる。

試合時間が切れてしまったのだ。

 

多少マナーは悪いが、仕方ない。

「勝てそうですか?」

焦る初心者を相手に盤外戦術に走る。詰める。問い詰める。

「わからないです。」

通じない。伝わらない。

 

状況は更に悪変する。

ボスを切らしてしまっていて、あなぬけのヒモしか勝ち筋がない状況・・・いや、あなぬけのヒモで勝ちの状況であった。

しかし、相手がベンチのブラッキーVをダイマックス。

あなぬけのヒモによる攻撃を受けきれるポケモンが現れてしまった。

 

番を返される。

終わった。

隣に立つジャッジ。ダメだ、これではオポネントに関する説明をして負けを認めさせることなど不可能だ。非紳士的行為で罰則を受けることは避けられない。

 

だが、一度盤外戦術に走った以上、このまま走り切らせてもらう。

あなぬけのヒモを打つ、と同時に両手を組み、祈る動作。

そして一言。「お願い!」

 

気付いてくれ・・・!対戦前の会話を。

「両負けだけは避けたい」

この言葉を・・・。

 

・・・。

 

・・・・・・・。

 

『えっ、そういうこと?』

 

何かに気付いた。通じた。

頼む!君のためにオポネントを上げてみせる!勝ち抜いてみせる!だから俺に命を預けてくれ!

だが相手の手は動かない。いや、手が動いていないことが自分にとっては良い状況なのだ。

 

ここで対戦相手が予想外の行動を見せる。

 

『オポネント・・・とかで普通に負けるのと何が違うんですか?』

 

近くに立っていたジャッジに問うのだ!

IQ200と見紛うばかりの行動にジャッジも俺も困惑。

ここで俺が対戦相手の言葉に答えてしまうと、罰則される可能性がある。口を堅く閉ざす。

ジャッジは答える。

 

『両者敗北だとオポネントの数字が低くなり、のちの順位が変わってくる可能性があります。』

 

きた!公平な回答だが、風向きがきている!

 

『どっちがいいんですか?』

 

己の命運をジャッジに託した。もうどうにでもなれ!

 

『お答えできません。』

 

当たり前だ。

 

俺の我慢の糸が切れた。言葉を発する。

「一人はみんなのために...」

祈る動作は保ったままだ。

ジャッジに指摘されたら「独り言です」とでも言い返そう・・・。そう思った直後だった。

 

相手はバトル場にヘルガーを差し出す。

 

「ありがとう。」

 

思わず言葉が漏れる。

バドレックスがヘルガーにトドメを刺した。

"負けさせてしまった" 勝てない試合を勝ちにしてしまった。

 

「ありがとうございました。ごめんなさい。勝ってあなたを支えます。」

 

対戦相手に頭を下げる。

 

『これでよかったんですか?』

 

対戦相手は自分の行動の答えがわかっていなかった。

試合を最初から最後まで観ていた隣の席の人が飛び込んでくる。

「合ってますよ!正解です。試合アツかったです!」

 

確かに。幕切れは気持ちのいいものではなかったが、試合の内容は本当に熱かった。グッドゲームだった。

 

「俺、勝ち上がってみせます!頑張ります!」

 

対戦相手に誠意を見せる。伝わっているであろうか。

こうなってしまった以上、絶対負けられない。気合を入れ、次の対戦卓へ向かった。

 

1回戦は時間切れまで試合をしてしまったので、休む間もなく2回戦だ。

 

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2回戦の卓へ着席。

対戦相手がジャッジに尋ねる。

 

『トイレ行ってもいいですか?』

 

出た。CLに巣食う第二の"魔物"、尿意だ。

これを読んでいるまだCLに出たことのない方へ、

トイレにはこまめに行きましょう。

3回戦の開始前までには絶対にトイレに行きましょう。

CLでは、3回戦の試合前に参加賞の配布、後半まで勝てば勝利賞の配布があり、試合開始までだいぶ待たされます。

 

●2回戦 ミュウVMAX 〇

結局、対戦相手がトイレに行くことはなかった。

試合開始時に着席していなければ不戦敗となってしまうからだ。

 

ゲーム序盤、相手の動きがあまりスムーズではなく、そこに雪道が刺す。

これがクリティカルヒット。相手はなすすべなく崩れ落ちていった。

 

対戦は10分もかからず終了。スコアシート提出直後、対戦相手は急いでトイレへと向かった。

 

●3回戦 れんげきウーラオス 〇

ベンチバリアとタフネスマントで相手の強行動をシャットアウト。

れんげきウーラオスは、はくばスイクンにベンチバリアを展開されると戦い方が一辺倒になる。

キョダイレンゲキは封殺、本来強行動であるひゃくれつラッシュも後続のはくばバドレックスが許さない。残された選択肢はしっぷうづきのみ。

しっぷうづき2回+クイックシューターorヨガループにより早く到達しなくてはならない。なぜ"より早く"と表現したのか、それは「はくばスイクンが攻撃の手を緩めることはないから」だ。

ベンチバリアに向かってクイックシューターやボスを当てようものなら、何がれんげきよ!と言わんばかりの怒涛の攻撃が飛んでくる。

ベンチバリアに攻撃回数を1回使ってしまうことは大赤字なのだ。

 

相手はわかっていた。しっぷうづきをはくばバドレックスに放つ、更に放つ。

300ものダメージを負ったバドレックスはれんげきウーラオスにとって脅威ではない。れんげきウーラオスにとってのゴールは「はくばバドレックスを倒すこと」ではなく「はくばバドレックスに300ダメージを与えること」だ。

サイドを取らないプレイ、これはリセットスタンプの回避や、クイックシューターによってサイドを取り手札を増やすことに繋がるのだ。

 

だが、天秤が相手に傾くことはなかった。しっぷうづきを放たれている間にも、俺のスイクンは攻撃の手を緩めなかった。

相手はクイックシューターによりサイドを取り進め、一刻も早く勝ちへと向かう姿勢を見せる。

相手はミュウに向かってボスの指令を放ち、ベンチバリアを粉砕する。

はくばバドレックス相手には本来悪手とされるプレイだ。しかし何故相手はそのプレイに走ったのか。

そう、攻撃回数が足りないのだ。

相手にはそれしか手が残されていなかった。足りない攻撃回数を補うには「フルパワーのキョダイレンゲキを放つ」しかない。そのためにベンチバリアを砕いたのだ。

砕かれたベンチバリアの中からスイクンが現れる。

ボスの指令。手負いのれんげきウーラオスを指す。スイクンの矛先がそちらへと向かう。

サイドをすべて取り切り勝利。理想的な勝ち方だった。

しかし、うらこうさくを使うデッキ同士の対戦。自ずと長時間の試合になり、少し疲労を感じる。

だがこんなところでくたばってはいられない。気合を入れ、次の試合へ。

 

●4回戦 ザシアンV 〇

マリガンで見える基本鋼エネルギーとメタルソーサー。

バトルスタート時に現れたのはザシアン。

負けを確信した。だがやるしかない。

先攻を奪取。ベンチを展開。スタートしたスイクンにエネルギーを付ける。

相手はベンチにザシアンを呼び、結晶の洞窟を展開。ドローを進め、ふとうのつるぎでエネルギーが付く。

ここから勝つにはとにかく相手を止めるしかない。

頂への雪道+マリィのコンボ、ブリザードロンドのダメージを計算。

140ダメージのブリザードロンドなら結晶の洞窟で回復されても110ダメージ。追撃で倒すことができるが、120ダメージだと結晶の洞窟の回復で90ダメージ。ザシアンのHP220に到達するには140ダメージで追撃する必要があるが、マリィで手札を流された場合、ベンチをフル展開できない可能性がある。

ここしかない!フル展開することを選択。そしてブリザードロンドを放つ。

相手は鋼エネルギーとメタルソーサーとポケモンいれかえを次々と叩きつけ、ブレイブキャリバーへと到達。

「なんという引きの強さだ!」と思ったが、相手の手札は0枚。状況は悪くない。

スイクンは倒されてしまったが、うらこうさくを駆使し2体目のスイクンを育て上げる。攻撃の手を緩めない。

相手のトップドローはスマホロトム。ドローサポートだったら危なかった。

動きの止まった相手に攻撃を叩き込み、無事に勝利。

あまりにも不利なマッチアップだったが、なんとかなった。

 

相手がサイドを表にする。そこには2体のヤレユータンが。

そうか、お前が戦犯か。

これがCL第三の"魔物"、事故である。

 

それを見た瞬間、脳内に前回大会の記憶が蘇る。

4-0連勝からの事故負け、更に事故負けの2連敗。苦い記憶だ。

現在の戦績は4-0。2体のヤレユータンに「明日は我が身」と言われたような気持ちだった。

二度とあんな思いをしてなるものか。

 

 

 

 

 

 

 

ケツに力を入れた。

 

 

●5回戦 アルセウス&ディアルガ&パルキアGX+ガラルファイヤーV 〇

所謂三神ファイヤーと呼ばれるデッキタイプとマッチング。

前回の京都大会ではアルセウス&ディアルガ&パルキアGXを採用したデッキと4回マッチングし、すべて勝利している。

自信はあった。勝ちを確信した。

 

あなぬけのヒモとボスの指令を駆使し、ガラルファイヤーとザシアンを屠る。

更に追撃。ボスの指令でオドリドリGXに攻撃を仕掛ける。

やはりボスの指令の枚数は甘えるべきではない。このカードは多ければ多いほどこのデッキのパワーを引き出してくれる。

オドリドリGXを一撃で倒すには至らなかったが、与えたダメージは140。

そしてミュウのサイコパワー!こいつの強みはベンチバリアだけではない。こういった芸当もできるのだ。

逃げ切った。やはりこの手に限る。神など相手にしていられるか。

 

ケツに力が入っていたぞ!京都大会での悪夢を打ち破る。

今日はツイている。このまま連勝だ!

 

充分な時間があるとはいえない休憩時間を終え、6回戦の卓へ。

ここまでくると相手は相当の猛者だぞ。気合を入れる。

 

●6回戦 ミラーマッチ 〇

ついに起きてしまったミラーマッチ。幸運にも先攻を奪取。

だが相手は後攻での動きを熟知していた。アタッカーを場に出さず、メッソンにエネルギーを付け、ワザ どんどんよぶ を宣言。

やられた。この状況、こちらはメッソンを倒してサイドを1枚しか取れない状況だが、相手はそこからうらこうさくとメロン キバナを駆使しブリザードロンドを放つことができる。つまり、ポケモンV同士の戦いで先殴りされてしまうことを意味する。

だがこの状況から逃れる術はない。やむを得ずサイドを取り進める。

案の定、相手はスイクンを起動し、攻撃を始める。

こうなった以上、こちらがやることは一つ。王を降臨させることだ。

2体のはくばバドレックスをベンチに出し、メロンで1体へ、手貼りで1体へエネルギーを供給。

相手がボスの指令を使おうとも、必ずはくばバドレックスVMAXで攻撃する作戦だ。

試合はこちらが優勢に動く。

相手は捲りの動きに走る。うらこうさく キバナを駆使し、盤面を着々と作り上げていく。

だが間もなく、相手の様子が変わる。

 

「ミスった~!」

 

ミスしたことを声に出す。

フリであろうか?自分にはまだ疑う余地があった。なぜならミラーマッチは、負けの黄金パターンに入ろうとも「強いスタンプを打ちVMAXを押し付ける」ことで勝ちの目があるからだ。

油断はしない。疑ってかかる。

 

だがその疑いはすぐに晴れた。相手の放ったワザは「つきさす」だったのだ。

そう、相手ははくばバドレックスVMAXが尽きたことを見落としていた。その上で「はくばバドレックスを使うことを前提としたうらこうさく 盤面展開」をしていたのだ。

声に出して当たり前だ。「完全に勝ち筋がない」のだ。ミスしたことを口に出したって変わらないのだ。

 

これがCLに潜む第四の魔物、”疲れ”である。

 

"疲れ"以外に何があるのだろうか?これだけミラーマッチを熟知したプレイを見せられたんだ。真のイレギュラーであることは目に見えてわかる。

疲れがプレイを乱すということは言い逃れのできない真実だ。これを真実だとは思わない人は過去の大型大会の配信卓を片っ端から見ると良い。

たかがカードゲームと侮ることなかれ、メンタル面だけではなくフィジカル面も勝敗を左右するのだ。

試合は6回戦、9回戦の長丁場の折り返し地点。疲れが出て当然だ。

 

"魔物"によって2つの勝利を立て続けに手に入れた。

運が良かっただけ 相手がプレミしただけ、人はそう言うかもしれないが、俺はそんな冷たい言葉で済ませたくない。そう思った。

 

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思えば6連勝。大型大会に参加した回数は片手を越え、もうすぐ両手を埋まるくらいの数だが、6連勝は初めての経験だった。

だが、ここで舞い上がってはいられない。

ここから先は実力で勝つことのできない世界だ。

俺が相手より勝ることのできる部分といえば"運"と"情熱"くらいのものだろう。

"情熱"で勝ってみせる!そう思い7回戦の卓へ向かったが、目の前にいたのは

 

 

 

 

 

全身リザードン装備のリザードン人間だった。

 

 

 

 

 

 

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さっそく情熱で負けた瞬間であった。視界に入るものの9割くらいがリザードンなのである。最近出たリザードンのバカ高い時計あるじゃん?あれも付けてた。限定700本だぞあれ。

対戦相手のテンションも独特だ。今大会のメンタル面はかなり安定していたのだが、一気に呑まれてしまう。この俺が相手に引っ張られている。

 

対戦相手が海外製のコイン(もちろんリザードン)しか持っていなく、自分は対戦前に「日本製のコインを裏から投げてください」と提案しているため、いったんジャッジを呼ぶ。だが対戦相手は「リザードン使いたいです」とジャッジを斬る。

クセが強い。完全に呑まれた。相手のテンションに吞み込まれてしまった。コインの提案も海外製のものを使うことに合意した。これ以上相手のペースに合わせられない。そう思ったのだ。

 

対戦相手はきっとリザードンVMAX たけるとうき キングブレイズのいずれかであろう。

どれも環境デッキにはそう不利ではない要素を持ったデッキだ。おそらくVMAXかたけるとうきと予想。数多の三神を屠ってきたのであろう。そうであるなら完璧な環境読みだ。

 

 

7回戦 クワガノン ×

クワガノンだった。

お互いにうらこうさくを使うデッキ。デッキを回すことに多くの時間を使う。

それなりにプレイは早い自信があった。だが対戦相手はジャッジにこまめに時間を聞く。

まっとうな行為だ、だが試合前にさんざん揺さぶられた身としては、"煽り"(挑発ではない)と取れる。だがここで呑まれたら負けだ。ペースを崩さず試合を続ける。

 

相手のベンチにはまんべんなくエネルギーが貼られ、ボスの指令+グッズロックの通りが悪い。ボスの指令を使ってこちらのテンポを奪う。クワガノンのボスの指令は性質に噛み合っていないと思われがちだが、ベンチバリアの採用が増えたいま、ボスの指令を1枚投入するプレイヤーが多くいる。

そして、相手の構築にはこちらを圧倒的に上回る要素があった。

ボスの指令の"2枚目"があったのだ。しかもボスの指すものはクイックシューターを負ったはくばバドレックスV。致命傷だ。

奪われたテンポを取り返せず敗北。完敗だ。

 

負けたことを嘆いてはいられない。気持ちを切り替える。

しかし、頭の中は「どうしてリザードンじゃなかったんだ」という気持ちでいっぱいだ。

 

"2進化"で・・・。

"エネルギーをトラッシュして高打点を出す"・・・。

 

あっ、これ実質リザードンだ。

 

 

 

8回戦 ミュウVMAX ×

相手はマント付きスイクンからの攻撃をものともせず、ボスの指令をふんだんに使い、こちらのベンチに猛攻を仕掛ける。2体のはくばバドレックスVを失ってしまった。

相手は雪道スタンプ対策でベンチにマーシャドーを展開していた。相手の残りサイドは2枚。

インテレオン(うらこうさく)を場に出して粘る。相手はインテレオンを倒してもサイドを取り切ることはできない。

相手の場には手負いのミュウが2体。こちらの勝ち筋は、無傷のマント付きスイクン1体で2体のミュウを攻撃することだ。

相手はこれに気付いていた。じょうねつのしずくでベンチのマント付きスイクンに5つのダメカンを放つ。そう、これが「絶対的な負け筋」だ。5つのダメカンが乗ることはタフネスマントを無力化されることに等しい。自分のデッキにタフネスマントの2枚目は入っていない。負けが確定してしまった。

 

2敗した時点でトーナメントに上がる可能性は残されていない。泣いても笑っても次の試合で最後だ。だったら、最後くらい楽しんでポケカしようじゃないか。

精一杯楽しむぞ!という気持ちを胸に、最後の戦いへ。

 

 

 

9回戦  〇

相手は大事故を起こしていた。

ベンチバリアのミュウ単騎で何もせずに先攻1ターン目を終えたのだ。

こちらはメッソンスタート。

手札にはメロン クイックボール 基本水エネルギー2枚。

おあつらえ向き。後攻1ターン目に攻撃できる可能性がある手札。

足りないものは入れ替え札だけだ。

神は俺に楽しくポケカをさせたくないらしい。

クイックボールで水エネルギーを捨て、スイクンを手札へ。スイクンにエネルギーを付ける。

メロンを使ってスイクンに水エネルギーを付け、3枚引く。

引いた3枚は頂への雪道 リセットスタンプ・・・そしてポケモン通信だ。

繋がってしまった。

山札には3枚の入れ替え札、そしてデデンネGXがあることを確認している。

ここでデデチェンジして入れ替え札を引けば、ブリザードロンドを放つことができる。ダメージはスイクン メッソン そしてデデンネで60点へと到達し、ミュウを倒し勝利だ。

だが、相手のデッキがわからない。もしもここで入れ替え札を引けず、かつ相手のデッキが三神だったら「スイクンデデンネを倒されたら負けてしまう」のである。

そう、確実に裏目は存在するのだ。

 

ポケモン通信を使い、インテレオンを山札に戻し、デッキを開く。

 

「いけ」

 

悪魔が囁く。

ラクして勝てることに越したことはない。

予選最終戦。体力も限界に近い。

悪魔の囁きに乗せられ、言葉を漏らす。

 

「男を見せます。」

 

隣の卓に座っているプレイヤーが思わず笑う。

男に二言はない。デデンネGXを手札に加える。

そして、デデンネGXを場へ。

頂への雪道 リセットスタンプ ボスの指令・・・勝つためのカード、ここまで勝たせてくれたカードをすべて叩き切った。

 

音を立てて、手を2回叩く。マナーが悪い。

 

山札から6枚のカードを取り除き、おそるおそる、1枚ずつ確認する。

 

(頼む、引いてくれ。勝たせてくれ。ラクにしてくれ・・・。)

ラクをする人間に神がほほ笑むわけがない。1枚、2枚と求めていないカードが現れる。

(楽しくやりましょう!)

対戦前の自分の言葉が頭の中に響く。その直後だ。

 

自分の手元に回収ネットが現れる。

 

神は裏切った。やはり俺に楽しくポケカをさせたくないようだ。

残りのカードをすべて手繰り寄せ、回収ネットを使う。

 

クソゲー!!!!!!!!!!!!!』

 

対戦相手が叫ぶ。俺だってそう思う。こんなのクソゲーだ。

「楽しく試合できれば幸せです!」と声をかけたばかりだというのに。

 

リザードロンドを放つ。誰よりも早く試合を終えた。

 

かける言葉がない。言葉をかけたのかもしれないが、思い出せない。頭が思い出すことを拒否している。

震える手でスコアシートを書き、少し言葉を交わして、すぐにトイレに向かったことを覚えている。

楽しくやりましょう!と言っておきながらあんな試合をしてしまった自分が恥ずかしくなり、対戦相手と顔を合わせられなかったのだ。

 

少しトイレに引きこもり、また席に戻る。

冷静になった。「勝ちは勝ち」と思えるくらいには落ち着いた。

 

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順位が発表された。飛び込んできたのは29位だ。

前回は56位。ベスト64からベスト32へと躍進。

 

相手の事故 ミス 事故で3本も勝たせてもらっている。これは自分の実力なのだろうか?と思ったが、自分のデッキはすべての試合でしっかり戦ってくれた。ベストを尽くしてくれた。

これを運勝ちと言い張るのは、ここまで戦ってくれたポケモンたち 対戦相手のみんな そしてこのデッキを磨き上げてくれた山梨の仲間たちに失礼だと思った。だから、この戦いに関わったすべてに感謝をした。

 

入賞賞品の受け取り。来年のJCSへの優先権、あなぬけのヒモ、そしてTOP32のスリーブが配られる。

配ってくれたスタッフが「おめでとうございます。」と一言。心の底から嬉しさが湧き上がってくる。

念願の入賞スリーブを手に取る。心なしか、すこしずっしりしている。

 

会場に迷惑はかけられない。賞品をカバンにしまい、会場を去るために歩き出す。

 

歩き出して間もなく、TOP16の席には6回戦と7回戦の対戦相手がいるではないか。

彼らは勝ち続けた。そして、彼らが勝ち続けたおかげで自分はTOP32の席に座ることができた。

彼らと視線が合う。ガッツポーズ、そして手を振る。応援する気持ちを込める。

 

オポネント制度がある限り、対戦相手とはその時限りの関係ではない。

より高みへいくためには、勝ち続ける 生き残ることが必須条件。

だから、試合が終わったら必ず声をかける。勝ったときは「勝ってオポネント上げます!頑張ります!」負けたときは「頑張ってください!自分も頑張ります!」

昨日の敵は今日の友。お互いに支え合う必要があるのだ。

彼らのおかげで自分がいる。心から感謝をした。

 

――――――――――――――――

 

本当に人に恵まれたなと思う一日だった。

山梨のみんなが積極的に練習に参加してくれたおかげで、共に参加した山梨のプレイヤーは勝利賞を獲得。自分は次の大会への切符を手にした。

対戦相手にも恵まれ、好きなゲームを楽しくプレイすることができた。

 

これからもポケモンカードを好きでいようと思った。

 

 

 

最後に、

 

 

 

空港でポケカやってるヤツに負けたくねえ~~~~~~~~!!!!

 


いくぞ、JCS!!!!!!